IMG_2836

 
 
友達が facebook でシェアしていた音楽系の記事で気になったものがあったのでちょっと書く。
 

 
ライブハウスはミュージシャンを育てない。なぜなら!
http://ugayaclipping.blog.so-net.ne.jp/2009-07-23-10
 

 
音楽家兼ライターの著者が書いている記事の概要をまとめるとこんな感じだった。
 

  • ライブハウスが旧態然としていて上から目線だ
  • ライブハウスは集客やお店のサービスを向上させるような努力をしていない
  • バンドマンたちも集客努力をしていない
  • バンドから徴収するノルマで成り立ってるから、今のライブハウスはレンタルホールのようなものだ
  • アメリカは違う。バーは客も呼ぶし、美味しい料理も出すし、設備も考えられてるし、バンドはちゃんとギャラをもらって演奏する
  • 「客を呼ばない」っていう日本のライブハウスの常識は非常識だ
  • 誰も損も得もしないからどんどん若い才能が埋もれていく
  • ミュージシャンの仕事はよい音楽をつくること(またそれに集中すること)だ
  • 欧米ではミュージシャンにギャラを払う文化が根付いているから、演奏することが仕事になり、プロになる

 
仰る通り。この記事の内容に特に依存はございません。
 
僕もそれなりの期間、音楽活動をしていたし、海外から日本にやってきたミュージシャンたちともいっしょにやっていた時期があったので、彼の言っていることはすごくよくわかる。
 
 
ただちょっと待ってほしい。
 
 
あなたがミュージシャンで、この記事を読んだ時「いいね」「シェア」で終わって良いものだろうか?
 
この記事はどこか「欧米ではこんな風にうまくやってるんだから、日本のライブハウスは見習うべきだ」と読み取れてしまう部分がある。
僕が問題視しているのは、原因の大部分はライブハウス側(=ミュージシャンが置かれている環境)にあって、日本のミュージシャンたちの責任が小さく見積もられている印象を受けることだ。
 
人間には、成功した時は自分の実力に因果関係を結び付け、失敗した時は自分を取り巻く環境に責任を押し付ける癖がある。
 
このご都合主義に因るバイアスを出来るだけ除いて考えてみよう。
 
 
こんな例はどうだろうか?
 

 
仮にあなたが日本に住む売れないミュージシャンだとしよう。
 
売れなくとも日々の努力は怠らない。
 
あなたは仕事帰りに貸しスタジオでの個人練習を終え、電車に乗って帰ろうと駅に向かっている。
疲れたし、喉も乾いている。
 
大通りから少し路地を入ったところがすごく賑わっているのに気付く。
 
何気なく立ち寄ってみると、オープンテラスの雰囲気の良いレストランでミュージシャンが演奏している。
 
店内の雰囲気は最高だし、席は満席だ。
 
食事を楽しむ人、お酒を片手に語らう人、ステージの演奏に耳を傾ける人・・・。
みんな本当に自由に自分たちの時間を楽しんでいる。
 
そして音楽が最高の時間を共有するのに大きな役割を果たしていることがミュージシャンであるあなたには手に取るように分かる。
 
そんな光景を「いいなぁ〜」なんて思いながら眺めていると、あなたの名前を呼ぶ声がする。
 
知っている顔だ。よく見るとしばらく会っていない旧友ではないか。
 
彼はこのレストランのオーナーだそうだ。
 
彼は言う。
 
「君から昔もらったデモテープ最高だったよ。今でもたまに聞くんだ。まだ音楽続けてるんだろ?」
 
あなたは頷く。
 
彼は続ける。
 
「よかったら次のステージで演奏しないか? 10分後だ。」
 

 
 
さて、あなたはここで嬉々として水を得た魚のように全力でお客さんを楽しませることができるだろうか?
 
それとも「機材が揃ってない」とか「このオーディエンスは自分に合わない」とか理由をでっち上げて逃げるだろうか?
 
このとき、過去にあなたが経験してきたくだらないライブハウスとの関係は完全に切り離されている。
目の前にいるオーナーも客もそんなことには全く興味が無い。
とにかく今の楽しい時間を存分に味わいたいし、もっと楽しくさせてくれる才能を待ち望んでいる。
 
もう一回考えてみよう。
あなたは喜んでこの機会を受け入れられるだろうか? それとも尻尾を巻いて逃げ出すだろうか?
 
環境が完璧に近い形で目の前に揃っていても、結局のところあなたが本当にプロのミュージシャンだという自覚があるかどうかが問題なのだ。
 
 
 

これは音楽業界だけの問題じゃない

 
 
個人的な話をすれば、今の僕はもう音楽をやってないからオーナーからの突然のオファーは丁寧にお断りするだろう。
音楽家を志している前提がないのだから当然だ。
 
タイムリーに昨夜も同じような場面に遭遇した。
 
古い友人(しばらく連絡を取っていなかった)から、Webサイトのコーディングをやらないか?と連絡が来た。
メール中のリンクにはおしゃれな今風のサイトが並んでいる。
 
彼はプログラマという大きな括りで僕に声を掛けたのだろうと思う。
 
ただ、jQuery や PHP に関して僕は専門でないから間髪入れずにお断りした。
 
 
これが BasicWerk のコアサービス(=プロとして携わっている仕事)だったら、まずは詳しく話を聞いただろう。
 
最高のクライアント、十分な報酬が揃っていればベターだが、必ずしも必要じゃない。
一番重要なのは、自分が解決すべき問題がそこにあるかだ。
 
状況がどうあれ、何とかしなきゃいけないことは何とかするという覚悟があるかどうか。それが決め手になる。
 
自分のそういう仕事振りをプロと呼ぶか、プロと呼ばれるか、そんなことは正直どうでもいい。
自分にしか出来ないと思ったら、とにかくやり抜く。それだけだ。
 
 
日本のライブハウスとバンドの例に戻れば、ライブハウスがバンドを育てないと嘆くよりも、あなたがミュージシャンとして自立するにはどうしたらいいかと真剣に考えてみる必要があるだろう。
当然、あなたが本当にミュージシャンとして成功したいならの話だ。
 

  • ライブハウス以外に演奏する場所はないだろうか?
  • ライブハウスと一括りにせず、本当に素晴らしいサービスを提供している場所はどこかにないだろうか?
  • 本当に見当たらないなら、何とか自分で最高の環境を作れないだろうか?
  • 自分は最高のステージで演奏するのに十分な力量を備えているだろうか?

 
環境に文句をつけたり、他人と自分を比べてる暇はない。
最高のパフォーマンスをしようと思ったらやることは山積みなのだ。
 
これはメタファーだ。ライブハウスやミュージシャンだけの問題じゃない。
 
あなたがビジネスで不振に陥っているなら、「ライブハウス」を企業や業界に、「ステージ」をあなたの職場に、「演奏」をあなたの技術や商品に、そして「ミュージシャン」をあなたに置き換えて考えてみるといいと思う。
 
どんな答えが出るかは人それぞれだろう。
 
でも確実に言えることがひとつある。
 
今、この瞬間から、愚痴るのをやめて行動しよう!
 
 
 

§1285 · Posted By · 1月 31, 2014 · Business · Tags: · [Print]